ヘッドハンティング最前線~現役ヘッドハンターが語る~

ヘッドハンティングの年収の決め方&相場とは?双方が納得する年収交渉術~後編~

2019年09月19日
担当
呑田 好和

ヘッドハンティングをされる多くの方々にとって、「年収」は重要なポイントです。年収は低すぎても高すぎても問題になるため、企業側・人材側の双方が納得できるラインを設定しなければなりません。

そこで、ヘッドハンティングを成功させるための年収交渉術等を10数年のヘッドハンターとしての経験からQ&A形式でご紹介します。

Q.ヘッドハンティングをされる人材は、最終的にどのような理由で転職を決めるケースが多いのか?

最終的に移籍をご決断されるポイントは、主に3つあります。

ひとつ目は「ポジション」。移籍先でのターゲットの方の立ち位置や役割ですね。
たとえば、IT系の会社で現在担当職として仕事をしているけれども、移籍先の会社ではマネジメントの領域も含まれるという場合。このときにターゲットの方がマネジメント志向であれば、移籍を希望する可能性が高いですね。

次に「成長感」。現在の会社でこれから5年~10年働いた場合の未来のキャリアと、転職先での5年先~10年先を見据えたキャリアを比較したとき、どちらのほうがより自分が活かされるかという点です。これには単純なキャリアだけではなく、それぞれの会社の経営理念や企業風土も考慮されます。

3つ目は「年収」です。お金というと嫌がられるかもしれませんが、特に家庭がある方にとっては重要なポイントになりますね。

Q.3つのポイントの中で、特に重視されやすい点は?

最も重視されるポイントは「ポジション」です。

ターゲットは平均42歳前後のミドルクラスが圧倒的に多いですが、そういう方はご自身の成長感などに関してはある程度自分で把握しておられます。「こうやっていけばこれだけ成長するだろう」という点がしっかりと見えているんですね。
年収に関しても同じです。「業界の中でこのポジションなら、これくらいの年収がもらえるだろう」という基準がお分かりになっているので、仮に現在の年収が800万円だったとして、同業他社のメーカーに映る際に「年収1,300万円出しますよ」と言われても、「何だか怪しい!」と警戒されてしまいます。

Q.3ヘッドハンティングでは、どのようにして年収が決まることが多いのでしょうか?

たとえばメーカーやサービス業ですと、転職後の年収は前職に比べ、平均で10%~20%ほどアップすることが多いですね。ただ中には、「年収が下がってもいいから転職したい」という方もいらっしゃいます。
昔であれば国内の投資銀行で年収1,000万円もらっていたビジネスマンが、外資系企業に転職したら年収1,800万円に跳ね上がった…なんてこともあったでしょう。しかし、現在ではひっくり返るような高い年収になることは少ないと思います。

Q.年収がやや下がるにもかかわらず転職したケースでは、ターゲットの方はどこに魅力を感じて転職を決断したか?

ひとつは、やはりポジションですね。小さなオーナー企業を経営しているクライアントと何度か会って話をしていくうちに、社長の考え方やビジョン、事業の中身に惚れ込み、大手企業から移籍したという事例があります。

ほかにも、たとえば税理士法人や会計士、コンサルタントとして働いていたような方が、「ひとつの事業会社で財務や経営のコントローラーとして仕事をしていきたい」と事業会社に転職したこともあります。その方は目的を達成するかわりに、年収1,300万円から年収900〜1,000万円になりましたね。

Q.ヘッドハンターの立場から見て、「高年収でも欲しい」と思わせる人材の共通点は?

前編の記事でも申し上げましたが、「積極性・柔軟性・覚悟」を持った人材は業界や業種問わず求められやすいのではないでしょうか。私が担当したターゲットの中にも、「高年収でも欲しい」と感じた方がいらっしゃいます。

とはいえ、クライアントの要望が「子会社の社長を任せたい」というようなものであれば問題ないのですが、「ひとつの事業会社の中で部長職、あるいは課長職として迎え入れたい」「新規事業の責任者として欲しい」などのケースでは、なかなか採用に至ることが難しいですね。クライアントはターゲットと今いる社員とのバランスを考慮しなければなりませんし、それなりの規模の会社であれば給与の等級があるので、「採用するために高い年収を約束する」という決断においそれとは踏み切れません。

それでも、どうしても採用したいという場合は、「正社員以外の雇用形態で採用する措置」がとられることがあります。簡単に言えば、契約社員などですね。正社員以外であれば、給与の規定から外れていても周囲にとっては納得感がありますから。
ターゲットがそのポジションで実力を発揮して、ほかの社員から認められるようになれば、晴れて正社員として採用する。大手企業ではこのようなイレギュラーな形態はめったに見られませんが、IT系ベンチャーの中にはそういう柔軟な受け入れ方をするところもあります。

Q.クライアントが「どうしても欲しい!」と感じる人材が見つかった場合、どのようなテクニックを使って交渉をするのか?

前提としてヘッドハンティングのご依頼には、クライアントから「こういうポジションの人材を探して欲しい」というケースと、「○○社から××さんを引き抜いてきて欲しい」と名指しされるケースがあります。さらにターゲットに直接会うまでに、ご本人の実力や人物像が判明していることもあれば、判明していないこともあります。

ですから、まずは1回目~2回目のヒアリングで、「本当にクライアントの要望に適っているのか?」という点を慎重に確認します。求人サイトや人材紹介とは異なり、履歴書も職務経歴書もありませんので、クライアントとターゲット双方の状況や人物像を擦り合わせていきます。
そして現状への不満や将来への不安、「今後、どういう仕事に携わっていきたいのか?」という志向性などさまざまな角度から、どうターゲットをつついていけば響くかを考えつつ交渉していくのです。

Q.ターゲットの方との会話で意識していることは?

相手の話をきちんと聞いて、「こうしたほうがいいですよ」などと断言はしないように意識しています。むしろ「今後の仕事人生をどうお考えになっていますか?」と質問を投げかけますね。

ミドルクラスともなれば、長い時間ご自身の仕事と向き合ってきているはず。そこで、弊社からの打診が、「今いる会社と他社を真剣に比較検討するきっかけになれば」と意識しながらお話をしています。

日本の場合、だいぶ崩れてきているとはいえ終身雇用制がずっと続いてきていますから、自分の仕事について見つめ直す機会が多くありません。業績がよほど悪くない限り、ドラスティックに首を切られるということもあまりないですしね。
そのため、「気づいたら50歳~60歳になってしまっていた…」という方もいらっしゃいます。

そうやって仕事について考えることなしに、いつの間にか定年を迎えてしまっていた…なんてことになるのは本当にもったいない。比較検討した上で、「やはりうちの会社はいいな」と思えばヘッドハンティングを断ってとどまればいいのです。これは、あくまでも私の個人的な考えではありますが。

無論、ターゲットの方の中には、初めてお会いして1回目の交渉で終わるという方もいらっしゃいます。ですが、その後ご本人から「今はまだ転職できないんですが、今回の打診がこれから先の人生を考えるきっかけになりました」とご連絡をいただくことがあります。そう言っていただくと、ヘッドハンティングの話が進んだわけではないのですが、私としてはとても嬉しくなりますね。

最後に

今はもうだいぶ変わってきているのかもしれませんが、やはり人の採用は会社にとって非常に重要な位置付けです。新卒採用についても、中途採用についてもそう。採用コストを抑えようとする会社もありますが、経営者や人事部、採用を司るトップの方々がその重要性を認識することが大切だと思います。

といっても、「採用にお金をかけてほしい」と考えているわけではありません。この転職市場で「このポジションだったらこの採用手法で行こう」「この職種だったらこの採用手法で行こう」というように、目的に応じて採用のやり方を使い分けることが重要だと感じています。

その意味で、前線で人事を担当する方の役割は大きいと思いますね。また、そうした人事のお話をきちんと聞ける上司がいることも重要です。
今後、IoTなどのオートメーション化が進められていったとしても、キーとなる部分には間違いなく人の手が残っていくでしょう。特に技術職であれば、その傾向が顕著に出るのではないでしょうか。

その意味で、「人」を重視したほうがよいのではないかと思います。

【前編記事】
ヘッドハンティングを成功させる交渉術!求められる人材の3つの共通点とは?~前編~

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